こんにちは、井口です。患者さんとの会話でよく野球の話題が出るので、投球障害肩についてブログを書いていこうと思います。
投球障害肩は投球動作におけるスムーズな運動連鎖の破綻により肩甲上腕関節(肩関節)に過剰な負担がかかり起こります。肩の異常だけでなく、股関節などの下肢機能障害や胸郭、骨盤などの体幹機能障害が加わり発生することもあります。実際には、筋緊張や筋短縮などの筋機能異常が正常な関節機能を阻害している場合が多く、肩甲上腕関節は水平過外転や過剰な内旋運動が強いられることになります。この状態が持続すると、棘上筋・棘下筋の移行部付近の腱板関節面断裂や上方関節唇剥離(SLAP病変)が起こり、インターナルインピンジメントが起こります。
診断方法は、投球時の肩痛など本人の訴えから容易に診断できるが、問題は投球障害肩を引き起こしている根本の原因を探ることにあります。肩甲帯や姿勢に対する視診、肩関節や股関節の他動的な関節可動域測定にて筋緊張の有無と部位を特定し、抵抗運動に対する肩甲帯の反応にて肩甲帯の固定力や筋機能を評価し、インターナルインピンジメントの肢位を取らせた疼痛誘発テストで反応を診ます。次いで筋緊張を落としたり筋促通を加えたりして、機能低下部位の機能を一時的に向上させた上で疼痛誘発テストの反応を診るなどして理学療法に反応するか否かを総合的に判断します。
治療方法として、運動療法を中心とした機能低下部位の機能訓練を行い、投球動作時に肩甲上腕関節の求心位が取れるようにします。肩甲上腕関節内に多少の解剖学的破綻があってもほとんどの症例が理学療法で軽快するが、解剖学的破綻のために機能改善の後も引っかかりや疼痛の取れない場合や、改善された機能が維持できない場合は関節鏡視下手術を行います。
投球障害の多くがそのフォームに原因があり、修正が必要となることも多くあります。ただし、投球フォームは個人差が大きいため、画一的なフォームヘの修正はかえって運動連鎖を乱し投球障害を助長したり、パフォーマンスを低下させる危険性もあります。また、レベルが上がるほどフォーム修正には消極的なことが多いため、慎重に対応しなくてはいけません。修正は個々の体格、年齢、競技レベル、関節可動域、アライメントなどの身体的特徴を考慮したうえで行うことが基本となるが当然のことながら修正するポイントはできるだけ少ないほうがよいとされます。投球フォームの修正は一人で考えるのではなく、監督やコーチと十分協議し共通理解を得て取り組むことが大切です。
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